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ごちそうさま。

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映画を見てきました。
今年は1月に「シャイン・ア・ライト」を見たので僕にとって2本目の映画。

2月にはDVDながら「バッファロー'66」を見ていたのです。
「これでDVDも合わせたら毎月映画を見ていることになるね」と僕。
「DVDはカウントに入れちゃダメよ」と彼女。
2009年は少なくとも2ヶ月に一度、映画館に足を運ぶことがこの時決まったのでした。

もう4月になると言うのに、寒の戻りで神戸はクリスマスのように肌寒かった。
さすがに12月の魔法は解けていたけれど、街には春休み特有のおっとりとした時間が流れていたのです。

予約した座席に着いて見た映画は「ホノカアボーイ

あの温暖な、湿気を含まないカラッとした気候であったり
まるでそこだけ時計の針の進むのが遅いようなのどかさであったり
その土地でのんびり暮らす人々の素朴なあったかい笑顔であったり
そんなハワイの空気を、そのゆるさのまま、
時には本当に時間が止まった写真のように
映像として美しく切り取っていました。

まるでプールで遊んだ後に感じる少し気怠く眠い心地よさに似た
僕にとってはそんな映画でした。

色褪せたような映像は少しもないのだけれど
ハワイ特有の、あののんびりした空気感とあいまって
ともすれば単調になりがちになるであろう流れの中
時に映るビーさんのかわいらしい服装や仕草
キュートな部屋のカラフルさが僕にはとても印象的でした。

ハワイは僕にとってはとても思い入れのある場所です。

もうすぐ24歳を迎える春に、僕は下の兄の結婚式でハワイに行きました。
残念ながら上の兄夫婦は仕事の都合で行けずでしたが、父母と僕の三人で行く初めての海外旅行でした。

母にとっては、それが生涯最初で最後の海外旅行でした。

飛行機に乗ること自体が初めてなのに、日付変更線をまたぐ長時間フライト。そして時差ボケ。
常夏の島に一人はしゃいで街だ!美術館だ!と繰り出す僕とは対照的に、無事に式に出席した後は日中もホテルの部屋で寝込んでいた母さん。
父母と僕の三人で食事したホテルのブッフェで、コーヒーをこぼして服を汚し、どんくさいと父に叱られていた母さん。
岩礁の上をこわごわ歩き、辿り着いた岸壁の先に飛び散る波しぶきに一緒に声をあげた母さん。
兄夫婦や父、そして僕が喜んで海で泳いでいるのを一人麦わら帽子をかぶり木陰の下からまぶしそうに眺めていた母さん。

僕にとって最初で最後の家族揃っての海外旅行の地、ハワイはとても思い入れがあるのです。

映画を見ながら、そんな自分の中にある大切な映像を思い出しました。

そして、往々にして映画中に登場するビーさんの手料理。

ビーさんは言う。
「明日から毎日ここで晩御飯たべていきなさい」

食事を作る人の思い。
食事を食べる人の思い。

母さんの手作りの
あの懐かしい料理をもう一度食べたい
こころから、そう願ってしまった。

レオがビーさんに向けて発した最後の言葉。
そのひとことを聞いて僕は涙が止まらなかった。
そこには、彼が本当に伝えたい思いがこもっていたから。

本当に伝えたい思いは、ことばにすると時として簡潔です。
それ以上のことばにならないし、それ以下のことばにもならない。

それはまるでハワイで暮らす人々のように
素朴なことば。

ハワイ ハワイと来てみたけれど
お里恋しや 月の虹
ハワイ ハワイと来てみたけれど
あなた恋しや 月の虹